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広報WEB委員会企画 チリで活躍する日本人インタビュー第6段として今日はチリで活躍する素敵なバレエダンサー中田 一史(Kazufumi Nakata)さんにインタビューしました。中田さんは2004年からTeatro Municipal Santiago(サンチャゴ市立劇場 観光で訪れると必ず立ち寄るあの有名な建物)のバレエ団でダンサーとして活躍されていますが、現在ここに到るまでには日本、ヨーロッパにおいて色々な試練を通りぬけてこられました。そんな裏話を今回広報WEB委員インタビュアーがお伺いしました。
インタビュー実施日 2006年6月14日

I:今日は公演の合間をぬって来ていただいたんですよね?お忙しい中ありがとうございます。
さっそくですが、中田さんはバレエダンサーでご活躍ということですが、バレエを始めるきっかけというのはお母さまがバレエ教室を開かれていたのですか?

中田さん:母は教室は開いていませんが、母自身もバレエを小さい時からやっていました。弟が1人いるのですがその弟がまず最初に習い始めたのです。

I::お母さまに?

中:いえ、バレエ教室で。。。僕の弟はなんかしらテレビとか見てて音楽がかかると、勝手に動きはじめる子供だったんで 母親がバレエでも習わせてみようかと思ったらしくて・・

I:それじゃあ、中田さんが11歳でバレエを始めるまでに弟さんとバレエを見に行 ったりしたことはあったのですか?

中:いえ、なかったですね。僕は最初反対にバレエなんてどちらかというと女の子のするものだとバカにしてたんです。。近所にもう1人男の子でバレエ習ってた子がいたんでいじめたりしてたんですよ(笑)

I:ハハハッ〜〜  で 弟さんはなぜ始めたんですか?  

中:弟は先ほども言いましたが音楽がかかったら勝手に踊りだして、家でも誰にも踊れって言われてる訳でもないのに勝手に1人で踊ってたりしたんですよね。

I:その影響で中田さんも11歳からバレエを始められたのですか? 始められたのはどこでですか?

中:始めたのは家の近くのバレエ教室です。

I:神戸の?(中田さんは出身が神戸市)

中:そうです。

I:何かここまでにいたるまでにポイントとなるようなことは?

中:たまたま近所にあったバレエ教室が、関西では一番大きなバレエ団だったんです。。

I:へー なんというバレエ教室ですか?

中:貞松、浜田バレエ団というのですがその付属の教室でした。普通のバレエ教室に通ってたらほんと小さな発表会にしか出れていないんですけど、僕は運良くいい教室に行ったんで、普通では出させてもらえる機会のないようなプロの公演にも比較的早く参加させてもらっていたのです。

I:11歳から公演に参加するんですか?

中:そうですね・・・ 子役が必要な作品もあるので。 それで中学に入った時に、バレエ教室とバレエ団の間にジュニアバレエ団というのがあるんですがそのオーデション受けて入団しまして・・・ まあ誰でも受かるんですけどね。。(笑)

I:それも神戸で?

中:そうです同じ貞松、浜田バレエ団です。そこからはプロの公演に出れるようになりましてて年に3、4回は公演に行っていました。

I:オーディションに受かった時点でプロダンサーになったってことですか?

中:いやっ ・・・ じゃなく・・ お金もらえるとかそういうのではなくって・・・

I:じゃあギャラなしで出演していたってことですか?

:そうなんです。むしろ逆に月謝を払って出演させてもらったりしていたんですよ。

I:ってことはそこまでしても高いレベルでやることに価値があったということですね。

中:そうですね。中学を卒業したときに、えーっと15歳ですか。。そこからプロのバレエ団に入りお金をもらいはじめました。高校は僕行っていないので。。

I:あっ そうなんですか。。こんなことお伺いしていいのか?

:どうぞ

I:普通今の時代だと高校まではほとんど進学するじゃないですか? 高校に行かずにバレエの道を選んだとき、ご両親はどう反応されたのですか?

:両親は僕が高校に行かないことにはまったく問題にしませんでした。むしろ普通に生活してても“箸にも棒にもかからへんような人間になってしまうやろう”と思われてたみたいなので賛成してくれましたね。自分で責任を持ってできるのだったら自分で好きなことをやりなさいと。。。

I:へ〜すごいご理解あるご両親ですね。でも学校の先生はなんとおっしゃいました?

:それが、先生は反対しましたねェ。というか進学しなかったのが学校で僕1人だったんで、何回も説得に家まで来ましたよ。(笑)

I:そうですよね、今は高校か専門学校くらい行きますよね

:ある意味僕は崖っぷち生活をしてるんですよ。バレエダンサーなんて怪我したらそこで終わりだし、僕みたいな中卒つぶしがきかないから。。

I:でも、バレエをやっている人で学校と両立している人もいますよね

:もちろん そういう両立しているえらいも人もいっぱいるんですが、僕は基本がこういう人間なんで あとそれに始めたのも11歳と遅かったので・・・ どうせやるのだったらずっと下っ端ばっかりやってるつもりなかったんでとことんやろうと。 はい。

I:なるほどね。ここまでは弟さんが最初に習いはじめたけどこの後はほとんど自分でもう??弟さんの影響とかはなかったんですか?

中:なかったですね、弟がこうするから僕もこうっていうのは・・ ただ歳が3つ違うのですが、最初始めた頃は彼が先に始めてたけど僕の方が上達するのが早かったんですが、途中から追い上げが激しくなってきまして刺激を受けましたよね

I:弟さんはまだバレエを続けてらっしゃるのですか?

中:はいやってます。 彼は今イタリアにいます。

I:そうなんですか〜 ご兄弟お二人とも海外ですか。 

中:彼はどう思っているかは知りませんが、僕は弟に対して危機感を感じるのでそれが刺激になるわけです

I:アマからプロになるまでの期間、下積み生活っていうのはあったのですか?

中:はい。裏方の仕事とかやりましたよ。 先輩の衣装片付けたりとか、スタジオの掃除。。鏡磨いたりとか ・・・ やっぱり日本って芸事の世界はきびしいんで。こっち(チリ)ではそういうのないんですよ。それ専門の人がいるんで・・・ まあ、とりあえず朝は一番早く行って先輩が来る前に楽屋を掃除したりしてました。 

I:あ〜そう やっぱり。。日本は掃除好きやもんね?どこもピカピカやし

I:じゃあ掃除しながらも舞台踏んで、なんていうか一人前にとりあえず認められるようなのはいつ頃?

中:僕はその前に16歳でバレエ団に入って、入ったその夏にヨーロッパのバレエ学校に研修で行く機会がありました。

I:ヨーロッパどこですか?

:え〜っと ミラノとモンテカルロとロンドンとパリ・・・です。そこで研修したんですが、その時に「高校も行かないでバレエをやっているので、せっかくならヨーロッパへ行って勉強したいなあ」と思ったんですね。日本に帰ってそのことを友人や知人に言うと“身のほどほど知らず”とバカにされたんですが・・・

I:えっ なんで?身のほど知らずって?

:やっぱり日本でやってても、ヨーロッパの学校というのはレベルが高いし、そもそも生まれてきた時点で日本 人は身体的条件とかがヨーロッパ人とは違うので・・・例えば国産の軽自動車とフェラーリーが争うという感じ? それくらいヨーロッパの人とは差があるんで、だから日本人でも海外に行くという人はコンクールなんかで賞をとっているトップクラスですよね。まあここ4,5年は変わってきているようですが、僕の時はそういう感じで海外なんかまだ敷居が高かったんです。

I:でも、そういう風に言われたということは“無理だよ”“大成しないよ”ということだよね?

:そうでしょう。行っても無駄っていうか、なんていうか・・・・ 確かに試験を受ければ日本人は受かることは受かるんですよ、授業料を払ってくれるんで。。だから入れるんですが、学校に入ってもほったらかしにされるとか。。。まあ、日本人だからということではないですが、あまり見込みのない人は教えてもらえないんですね。だから結局行っても役にたたないのではと思われてたんですが、それを言われたのが悔しかったのでとりあえず日本でやれるだけやって頑張って絶対行ってやろうと思ったんです。それから日本で2年ほど下積みしました。18歳まで。。

I:日本ではどういうところで公演を

:主に神戸ですが、たまには地方公演とかもやっていました。西日本は結構行きましたね。

I:給料をもらい始めたのは?

:入った時からもらっていたのですが、だんだん増えていきますよね。でも日本では自分の所属しているバレエ団の公演に出演しているだけでは、食べていけるくらいの給料はもらえないんで、女の子なんかは他の教室で教えたりとかするんですが、男性はなかなかそういう訳にはいかないですよね。でもね、日本はバレエ人口が世界で一番多いんです。

I:へえ〜 そうなの??

中:フランスやロシアよりずっと多いんですよ! コンビニの数くらいあるのではないでしょうか。。。だから僕達男はそんなところの発表会に出てゲスト料とかもらって食べていく感じですね。

I:お医者さんのインターンみたいですね。それでその後は?

中:はい。17歳の時にイタリアのミラノにスカラ座バレエ学校というのがあるんですが、そのバレエ団の日本公 演がありまして、その時別に講習会もあって参加したんですが、“ あっ これくらいのレベルなら僕も いけるんでは?”と思ったというか“そんなに差がない”ような気がして。。気がしただけなんですがね(   笑)

I:じゃあ 先生に声をかけられたとかそういうことでは?

中:誘われたとかそういうことではないです。

I:じゃあその講習会に参加して自信がついたということですね?

:そうですね 自信につながりましたね そんな感じで、その時の縁で18歳の時にスカラ座バレエ学校のオーディションを受けて入りました。日本人で入ったのは僕が始めてだったんです。

I:これもプロ契約してもらったの?

中:いえちがうんです これは学校だったんで

I:学費を払って?

:そうです、学生に戻った感じで

I:寮とかに入って

:いえ1人暮らしです。

I:この学校は何年とか、だいたいコースは決まっているんですか?

中:ほんとは1年生から入ると8年なんですが、僕は7年生から入ったんで2年だけ通いました。

I:なんで7年生から入れたのですか?もともと技術があったから?

中:はい そうですね

I:男女共学ですか?

中:そうです学校は共学なんですが、レッスンは男女別ですね。

I:そういう学校って一日中バレエばっかりしてるんですか?他の勉強はなしで?

中:ええっと・・・いや・・・ 夜学にいく子は夜学にいっていました。

I:じゃあ 語学なんかいらないですね?

:語学・・そうですね・・・ 最初は全然しゃべれなかったんですが、一様音楽の歴史とかそういう踊りに必要なことを教える授業はあったんです。。。でも僕にとっては全然意味がわからなかったので座ってるだけでその時間は落書きタイムでした(笑)

I:でもやっぱり言葉がしゃべれないと不利ってことはありますか?

中:そうですねぇ。。コミュニケーションできないとストレスとか溜まりますが、結局踊っている間は全然関係ないので。。

I:こういう有名な学校の先生なんかは生徒に対してフェアーなの?

中:人種とかは関係ないですね。そういうことよりどういう姿勢で取り組んでいるかとかそういうことのほうが大事なので、人種とかは関係ないですね。

I:じゃあ いい世界ですね。

中:不真面目にしているとか見込みがないと見られている人はほったらかしにされたりして、そういう態度をとられますが、ちゃんとやれば見てもらえるというか、でも先生も人間なので相性とかありますが・・・・

I:そんなにいいかげんじゃない

中:そうですね そういう意味では人間関係で苦労したことはないですね。でも身体的には、ヨーロッパ人は背も高くて体格も違うから僕らはハンディがありますけど。

I:足や手も長いしねェ。。

中:そうそう長いんですよー

I:やっぱり背が高い人ってバレエを踊ることにとっては得なんですか?

中:そう。やっぱり手足長いだけでそれだけできれいに見えるし、頭小さいし、日本人とは基本的に股関節の骨格が違うんです。ヒザのつきも違いますし・・・

I:全体的に身体がやわらかいの?

中:ヒザが中にこうやってはいるんですよ。。日本人ってO脚でこうなってるけど、ヨーロッパ人って逆にこうついてるんですよ。バレエって足をこういう形で動かすでしょ?股関節がもともと開いているんですよ彼らは。。。(中田さんのシュミレーション付き)

I:体格で 負けちゃうんですね?

中:そうでうね。もちろん日本人でも背が高くて身体もやわらかくてスタイルがきれい人もいるけど・・・・ 

I:ここの学校の生徒さんの国籍って?

中:色々ですね。。。 フランス人とかドイツ人とか色々いましたね。う〜ん。。。一応業界ではミラノのスカラ座といったらオペラでも世界三大劇場の一つなんですよ。

I:じゃあ、めちゃくちゃうれしかったでしょう オーディション合格したとき?

中:はい。合格したときはうれしかったです〜。

I:とりあえずどヨーロッパに行くと言ったときにバカにした人には、これである意味“できる”ってことを証明できたわけですよねえ? まあ人のことはどうでもいいけど。。。

中:ハハハッ 実は最初は日本の先生にも笑われてたんですが、実際には先生に助けてもらったんで合格したんで。。もしかしたら先生もそうやっって道をちょっと下げといて、やる気をださせる作戦をとってくれたのかもしれません(笑)

I:なるほどねえ おとしといて う〜ん・・・   それでこれから2年してから19歳で卒業して?

中:卒業はしたんですが、その前に就職活動をするんですよねえ・・・だけど僕は全然順調ではなくて、うちくらいのレベルの学校を卒業する人だったら普通なら、まあ最悪8回くらいどこかオーディション受けてるとどこかは通るんですが、僕は60箇所受けて 2、3箇所くらいしか受かりませんでしたね。。(苦笑・・・)

I:それはイタリアだけで?

:いや ヨーロッパ全体です。東の端から西の端まで片っ端から行き尽くして、全然ダメで・・・ やっと滑り止めみたいなところに受かったんですが、やっぱりそういうところには行きたくなくて。。。欲張りやったんで後で考えたらそういうところにでも入っておけばよかったとは思うんですが。う〜ん・・・結局そういうとこを蹴ってたのでどこにも入れなかったんですが、最後の最後で実はノルウェーの国立バレエ団に受かりました。

I:へえー 国立ならすごいですね

:え〜でも・・ノルウェーの国立バレエは国立でも中くらいのところで、そんなにレベルも高くなかったんですがそこも3ヶ月でクビになりました。ビザがとれなくて・・・ そこから1年浪人しまして・・ 

I:浪人?!

中:そうです。就職浪人しまして・・・ それもヨーロッパで・・ 日本に帰ることも考えたんですがせっかくだったんでもうちょっと頑張ってみようかと。。。

I:でも日本人でもビザとれないんだったら、他の国の人だととれない人も多いんじゃないの?

:そうですねえ ビザの問題が一番ネックになるところで

I:イライラしたでしょう? やりきれないねえ

中:しましたねえ・・でもしょうがないといえばしょうがない。僕 がヨーロッパ人だったらそういうことはなかったんですが。。

I:なるほどね。一年浪人して・・でも浪人するということは就職活動のシーズンっていうのがあるわけ ?

中: はい。だいたい11月から5月くらいがオーディションシーズンですか。。

I:浪人中はイタリアにいたんですか?

:そうですね。ほんとうはそんなことはできないんですが、特別にスカラ座バレエ団で練習だけさせてもらって、そうやって毎日練習しないと身体がなまるので。。バレエの基本はずっと続けることですからね

I:それはラッキーでしたね。それで20歳。

:そういうことで20歳は浪人で過ごしました。(笑) 21歳でやっとイタリアで就職できました。。

I:どこで?

中:すごい小さいカンパニーというかバレエ団だったんですが。。。(え〜っと名前なんやたったけ??)
名前長いんですよ。 ベルギー人の振り付け家がもっているプライベートカンパニーだったんで。。。
え〜っつと・・・(どうしても想い出せない中田さん)

I:それで、その小さいカンパニーで満足したの? 60回オーディション受けて2−3箇所合格したにもかかわらず行かなかったのに。。。浪人してまで行くところだったの?

中:う〜んそうなんですが〜〜〜。 就職先で僕らにとって基本的に大事なのは生活をしていかないといけないのでお金をちゃんとくれるところということなんですが、どういう仕事をするか?とか どういうどういう作品をやるか?とか どういうディレクターか?というのも非常に大事なんですよ。ここは小さくてお給料もすごい少なかったんですが、振付家のディレクターがいい感じの人で僕とはフィーリングがよくあいました。 でもそこで長居するつもりはなくて、とりあえず就職浪人をしててもお金もいるし技術も磨かないといけないので働き始めたんですが、後で考えると逆によかったと。。。あそこで大分勉強させてもらいました。

I:じゃあ 結局何年いたのですか?

中:そこで3年いましたね。

I:ということは24歳まで?

:そうです。それでヨーロッパ中公演に行くことができましたし。。

I:プライベートカンパニーでもヨーロッパ巡業するわけ?

中:周れますね。。カンパニーの大きさってそんな関係なくてやっている仕事の内容ですので。

I:公演はお客さんって入るんですか?

中:入りますね!そう入ります。。。 ヨーロッパではオペラやバレエは映画でも見に行こうか、パチンコでも行こうかという感覚でほんと大衆の生活の中に溶け込んでいるので。。

I:ふ〜〜んなるほどね (みんな納得)公演って何人くらいで動くんですか?

:この時は僕はクラッシクバレエではなく、コンテンポラリーをやっていたので そうですね15—6人くらいですね

I:コンテンポラリーって そんなのいいの?クラッシクからコンテンポラリーに変わったりして?

中:え〜っと・・・ 実は今、ヨーロッパのスタンダードにクラッシックバレエってほとんどなくなってきてるんですよ。むしろクラッシックバレエをやっているカンパニーの方が少なくて。。なぜならクラッシクは一回公演すると何億とか費用がかるけどコンテンポラリーだと身一つでできるのでそういうのが主流になってしまって。。でお客さんも「定番は定番」でいいけど、やっぱり同じ物ばっかり見るんじゃなくて新しいものを見たいという流れもあるので。。。

I:でもクラッシクと基本は同じなの?

中:基本はまあ・・・ どういうコンテンポラリーをやるかにもよりますが、振付ける人が動きを生み出していくんで一人一人違うんですが。。基本・・・ねえ。。 クラッシックバレエが踊れるというのは自分の身体をコントロールすることができるようになっているはずなんで、自分の身体を自由に動かせるというたてまえ、クラッシクバレエができたら、変な話“ヒップホップ”でもなんでもできちゃうんですね。

I:確かにクラッシックバレエのほうがフィジカルには見せるけどコンテンポラリーの方が表現力とかあるよね

中:そうなんですクラッシックは型が決まってて、その型の組み合わせをどんどん発展させていくんですね。コンテンポラリーは型がないんで“な〜んでもあり”ですね。ボクシングと総合格闘技みたいなものです。 

I:そのバレエ団に24歳までいてそれからは?

:ちょうどその頃次の段階に行きたいなあと考えてて。。。転職ではないんですが。。

I:南米に目を向けたんですか?

中:え〜(考えこむ) 特に僕は南米に目を向けてたわけじゃないんです。確かに南米のダンサーってアメリカに多いんですが、例えばアルゼンチンとかブラジルとかのダンサーってすごいんですよ!肉体的に筋肉の質がいいので技術的にもすごい高いんですよね。そういうのはヨーロッパにいる時からわかっていたんですが、でも“南米に行きたいなぁ”なんてこれっぽっちも思っていなかったんです。でもたまたまその今僕の働いているバレエ団の新しいディレクターになった人が、ずっとドイツでやってた方なんですがバレエ界ではちょっとした有名な人だったんですよ。それこそバレエやっている人なら誰でも知っている。。

I:誰ですか?

中:Marcia Haydee っていう人ですが。。

I:えっ ?!チリ人?(まったくバレエの知識のないインタビューアーは???でした。)

:いえ ブラジル人です。ブラジル人なんですが、もちろんまだ生きているんですが伝説の人なんですね!その人がたまたまイタリアに来てた際僕がその講習会を受けて、誘ってもらいました。

I:えっ 声かかったんだ?

中:そうなんです。それまではドイツのバレエ団でディレクターをやってたんですが、ちょうどチリに来る予定になってて“新しい人材を探してるから”ということで 運良く!!

I:この人はブラジル人だけとチリに来たんですか?

中:ブラジル人ですがドイツで有名になってチリに来たのです。

I:ふ〜ん (まだ彼女の重要さが理解できない)

中:僕なんかバレエ始めた時からバレエの本とかに出てくる人ですよね。ほんとラッキーだったんです。映画の世界でいうとジェームス・キャメロンが誘ってくれました!という感じです。だから周りの人にこのことを報告したとき、すごいびっくりされましたね!!

I:へ〜 どういう風に誘われたの?

中:それがですね・・・・ちょうど僕も彼女に“電波”?!を出したんですよ・・・
**=仕事探してるんですけど!=  **!みたいな(笑) そしたら “どうぞどうぞ”とすぐに契約してもらって

I:なるほどね それで今サンチャゴにいるわけですね? ここではどこに所属されているんでしたっけ?

中:正式にはTeatro Municipal Santiago(サンチャゴ市立歌劇場)のバレエ団です。今ごたごたしていますが。。

I:今ストしてるんですよね?(2006年7月現在)

中:はい、オーケストラと歌がストライキしてますが。。バレエのカンパニーは活動しています。

I:それでMarcia Haydeeさんというその有名な方が今ダイレクターなんですね?

中:はい バレエ団の。

I:ということは中田さんはチリの公務員ですか?

中:いや〜ちょっと違いますね。バレエダンサーが公務員というのはロシアなんかそうなんですがチリは違いますね。

I:で 話を一般的な方にして。。。最近の活動ってどんな感じでやられているのですか?

中:うちのバレエ団というのは南米の中ではもっとも機能しているバレエ団なので、年間で120−130回公演しています。地方公演等も入れると200回以上はあります。

I:その本拠地というのが?

中:本拠地はあのセントロにある市立歌劇場(Teatro Municipal)です。

I:地方公演国内だったらどういうところに行くのですか?

中:やっぱり大都市ですね。イキケ、アントファガスタ、テムコ、コンセプシオン、プンタアレーナス。

I:劇場の施設はいいんですか?地方は?

:まあ、ヨーロッパとか日本の劇場に比べると規模は全然違いますが。。

I:劇場が小さくて全員入りきれなくて踊りのスペースがないてこともあるんじゃないですか?

中:そうそう そういうところもあるのでそういう所に行くときは人数が少なくてもいいような作品を公演しますね

I:国外は?

中:リオ、サンパウロ・・・・ ブエノスアイレス。。あとは〜モンテビデオですね。ウルグアイ

I:日本はないですか?

:日本はないですねえ、そうそうメキシコシティにも行きました。。メキシコはフェスティバルがあって結構地方もまわりました

I:どれくらいの間隔で一つの作品を公演するのですか?

中:一つの出し物につきだいたい、8〜15回くらい公演をして、1回公演するとその作品はもう何年間かはやらないと・・・

I:やって、休んで やって 休んで?それとも1週間続けてやって1週間休む?

中:そうですね、今週公演が1週間あったとしたらその後2日休んで、その前の公演が終わった次の週は次の公演のリハーサルそういう感じですか。一応週休2日で、レッスンは朝の10時から夕方6時までです。

I:そんな次々と公演が入っているんですか?

中:そうですね。。。 1年間のスケジュールというのはもともと決まっているんですよ。

I:確か明日はビーニャ・デル・マールで公演でしたね?

中:明日はそうですね。

I:中田さんは公演に出演するとソロで踊るところとかあるのですか?

:実はバレエダンサーというものはもともと階級が分かれてて。。

I:へぇ〜 階級なんかあるんですか?

中:はい。 僕は肩書きと給料的には下っ端なんですが・・・ たまにそうですね・・・結構いいキャラクターをやるときもあります。

I:それって先生のマルシアさんが決めるの?

:そうですね。本当は与えられた役柄に口出ししないのがエチケットなんですが、中にはいるんですよ「この役がやりたい」と訴えていくダンサーが。。。  僕はそういうことは絶対しませんね。 

I:チリでバレエを習っている人っているのは結構お金持ちって感じですか?

:はあ そうでもないですね。。。 反対に貧しいというか。。。

I:バレエ教室なんかチリにあまりないでしょう?日本みたいに・・・

中:そうですね、うちのバレエ団に入ってくるチリ人は同じ市立劇場のバレエ学校で習っている人がほとんどですね。

I:バレエ学校もあるんですか?

:でもむしろチリ人は半分くらいでほとんどは外国人なんです。。。。

I:どこの人が多いのですか?

中:アルゼンチンが一番多いですね。あとウルグアイとか、パラグアイ人。

I:ってことはサンチャゴの市立劇場は南米の中でも有名なんですね 

:南米というか中南米を含めてうちが一番機能してるんではないかと思います。アルゼンチンのテアトロ・コロン(コロン劇場)は規模は大きいですが全然資金がなくて活動してないんですよ、うちの半分くらいしか公演していないんじゃないですか。。 

I:ここ(チリ)の資金はチケット販売だけでまかなっていけるわけですか?  

:いやあ〜 バレエというのは基本的にチケット代だけではまかなえないんで、多分サンチャゴ市からの援助とチリの国からの援助で、まかなっているって感じです。

I:なんかアワードみたいなのはないの?

中:賞とかですか?

I:そう 中南米賞とか?南米頑張りました賞とか?

中:あ〜 頑張りました賞っていうか個人で受賞する人はいますけど上の人ですね。。。

I:団体ではないんですか?

:団体で受賞したの??? 結構あると思いますが僕は知らないですね。 調べときます。(笑)

I:一番今チリ人で有名なバレエダンサーは誰ですか?

:チリ人で有名な人は〜〜あ〜〜 いない?!

I:いない?!

中:一番有名なのはやっぱりアルゼンチン人ですね。今成長株のチリ人はいますが、スターと呼べる人はいないですね。

I:だいたいダンサーの平均年齢は何歳くらいなのですか?

中:平均年齢ですか???うちは今若返りをしてまして(笑)・・・ う〜んいくつぐらいかな?

I:やっぱり寿命?寿命っていったら変だけど、バレエができる年齢ってそういうのはあるの?

中:一様肉体が続く限りなんですが。。まあ人によって違いますが。早くつぶれちゃう人とか

I:ちなみに一番年上の人は?

:一番上の人は41,2歳くらいですね

I:へ〜 そんな人いるんですか?

:やっぱりバレエの中でも色々キャラクターがあるんで、歳いった人が必要な作品とかもあるし。 まあでもだいたい多いのは20代半ば?僕みたいなのが一番多いですね

I:バレエ団に属していて何か日ごろ禁止されていることってありますか?

:場所によっては、契約する時点で禁止されていることありますね。。

I:えっ例えば?

中:うちはないですが僕ノルウェーで契約したときにスケートとスキーは禁止されましたね(笑)

I:へ〜 それって怪我したらダメってこと?

中:そうですね。仕事中に怪我するのは保険とか利くけど,仕事外で怪我されると損失になるじゃないですか。。 代役をたてないといけないし、色々問題になってくるんで怪我をするようなことは極力禁止しないと。。
私の所属しているバレエ団はいいかげん(笑)なんで何もないですね。。
でも僕らはオフと仕事中という境目がないんですよ。極端に言えば今も僕は仕事中っていうか。。。
(もちろん 時間外) 
舞台にでると裸と一緒なんで、よく知ってる人なら見たらわかるんですね、この人はどんな人かって。。
「いいかげんな生活をしてるんじゃないか?」みたいな。。。だから日ごろの生活からまじめにしておかないと   ね(笑)ほんと自己責任ですよね。上に行こうと思えば自分で一生懸命コントロールしないといけないんです

I:例えば食事のコントロールとかねえ。。?

中:そうですね。気にしないといけない人はしないといけないですね。これは体質によりますが、ダンサーって絶 対 太ってるとだめだから・・・ でもうちなんかはスタイル悪い人いるんですよ。北米やヨーロッパからみるとへ〜〜〜っという人もいますね。。 特に女の人は。。だからそういうところはいい加減です。やっぱり競争がそんなに激しくないんで。ヨーロッパなんか一発でクビにされますね 体重が増えると。。

I:今まで日本人だからって差別されたりしたことはないですか?

中:それはないですね、みんな仲良くしてくれています。 でもたまに振り付けに来た先生とかが日本人の名前覚えにくいので、それを“MR ハポン”とかって変な名前で呼ばれることはありますけど。。(笑) とにかく腕前次第ですね。僕が下手くそだったらバカにされるけどそうじゃなかったらばかにされることはないでしょうし、それは勝負事の世界なんで実力勝負?文句言われたくなかったら一生懸命やる!!  

I:今いるバレエ団の特徴は クラッシック??

中:そうですね。いまどきヨーロッパではここみたいなクラシックバレエをやっているところはめずらしいのですがだいたい公演はオーケストラの生の演奏で行い、テープとかは使わないんですが。。。でも今はオーケストラストライキ中でテープですね。

I:練習(市立劇場)もあそこでやっているのですか?

:はい そうです、だからスモッグのひどい時は大変ですよ(笑) (旧市街地にある劇場は特にスモッグがひど い)

I:ではここでみなさんがバレエを観る為のアドバイスをお願いします。バレエといえば素人からみると
“白鳥の湖 ”とか“くるみ割人形”しか知らないんですが。。

中:ハぁ・・・

I:結構行きたいと思っているんだけど、その一歩が出ない人が多いんですよね。 いくつか聞きたいんですが。。クラッシックバレエを楽しむためには?というのはあまりにも抽象的だけど、それに対し何かコメントありますか?初心者にお薦めできる情報は?

中:基本的にやっぱり日本ではバレエとかオペラとかはお金持ちの為のものというイメージがありますが、実はそういう敷居が高かったり排他的なイメージはなくほんと誰でも平等に、お金持ちであろうがそうでなかっても、見にきてもらって楽しんでもらえる芸術だと思うんですね。で、前知識とかも必要ないし。。。まあ、あればあったでそういう楽しみ方もありますが、バレエを見ることにより何かを理解してもらおうというのではなく、バレエを感じてもらう? 

I:ということは、作品のストーリーとかは知らなくてもいいの?

中:はいストーリーとかは知らなくてもわかります。  映画を見る感じで。

I:でも作品によって見やすいとか難しいとかそういうのはあるの?

:そういうのは確かにありますね。初めて見る人にお薦めするのは“くるみ割人形”とかそういうのがいいですねバレエをまったく知らない人でもわかりますので。。

I:じゃあ初心者向けの作品を3ついきましょう!

:“くるみ割人形”とか“白鳥の湖”とか。。。チャイコフスキーが作った曲ですね。
それと“眠れぬ森の美女”とか??

I:それってここでも公演しているってことですか?

中:“くるみ割人形”は日本でいう第九みたいなものでクリスマスシーズンになると絶対やるんですね
これは子供から誰でもいけますね

I:だいたい1公演何時間ですか?

中:休憩をはさんで2時間くらいですね。 40分やって 休憩15分 また40分

I:だいたい会場は満席になるんですか?

中:結構いつも売り切れていますね。 最後まで残るのは上のほうの安い席ですね

I:なるほど、是非今度公演を見に行かせていただきます。

:はい 是非お越しください

I:この劇場ホームページあるんですよね? 

:はい公演の内容を書いたホームページがありますので。(詳細は下記)

I:鑑賞中のマナーは?

;鑑賞中のマナーですか?基本的に音をたてないってことですか。

I:音をたてないということは、拍手のタイミングとかも難しそうですね?

:いやっ そういうのは周りの人をみてもらえば  え〜っ。。。わかりますよ。
基本的にヨーロッパとかはマニアみたいな人が多いので間違ったところで拍手なんかすると“シ〜〜っ”て言われたりするんですが、まあこっち(チリ)はその点自由ですね。でも公演中のおしゃべりはダメですね。これだけはやめてもらいたい。

I:服装とかもジーンズとかじゃだめですよね?

中:まあ。。座る席にもよりますが、常識的なマナーさえまもってもらえば・・・ バレエを鑑賞するということは劇場に1歩入った瞬間から始まるんで。。   

I:ゴルフ場でも半ズボンで行ったらダメとかあるもんね、それにポップコーンとか買うやつはいないだろう
な? ハハハッ 
今後の公演予定はホームページをみていただいて。。。
まだまだ日本人のダンサーが活躍しているというのを知らない人もいるのでこの機会にチリ在住のみなさんには見に来てもらいたいですよね

中:はい 是非お越しください。お待ちしております。

(インタビュー後記)                   

インタビュー後、バレエに興味をもってしまった我々は、丁度公演中であった“三銃士”を実際Teatro Municipal まで見に行ってきました。開演の午後7時前。劇場前には着飾った人達が続々と姿を見せ始め、我々も緊張気味にいざ劇場の中へ。初めての経験でしたがまさにそこは社交界の華やかさ。美しい天井に描かれた絵画を見ながら開演を待ちました。
今回購入した席は前から3番目。中田さんが肉眼でもわかるいい位置に陣取りました。公演が始まり5分後。三銃士役の中田さん登場。やっぱり出てきた瞬間“あっ中田さんだ”と一瞬興奮状態におちいります。約2時間の公演。あの大舞台で準主役としその日はソロも務めた中田さん。踊っている姿も素敵ですが、サンチャゴでこんなに頑張っている人もいるんだと同じ日本人として誇りを持つことができました。公演後お疲れのところ劇場近くのレストランに駆けつけてくれた中田さん。
劇場でみた顔とはまた違ったやさしい中田さんがそこにいました              

皆さんも一度是非観にいかれてください。                                                        

今後のスケジュールとチケットの購入の仕方をお教えします。

Teatro Municipal de Santiago 

住所 Agustina 794 ( San Antonioとの角)Santiago Centro  

注:中田さんは2007年サンチャゴ市立劇場バレエ団を退団されました

Camara Chileno Japonesa
ギャラリー