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在チリ特命全権大使 村上 秀德 氏


日時: 2011年12月9日(金)
場所: 在チリ日本国大使館
インタビューアー: カマラ広報WEB委員

広報WEB委員会では、チリの日本大使館に、特命全権大使として2011年10月に着任なされた村上大使にお時間を頂き、お話を伺いました。

委員:本日は、着任後2ヶ月足らずとお忙しい中、インタビューの時間を頂きありがとうございます。週刊誌風に言いますと、“村上大使の素顔に迫る。カマラ突撃インタビュー!”というところでしょうか。色々お話を伺いながら、カマラ会員の皆さま、チリ在住の方々に大使の素顔を知っていただければと思います。

村上大使: こちらこそよろしく御願いします。何なりと聞いてください。

委員:先ず、これまでのお仕事に関して伺いたいのですが、1974年に当時の農林省に入省されたと聞いていますが、入省のきっかけや選ばれた理由を教えてください。

村上大使: 別に深く考えたわけではないのです。熊本県の出身であり、農業が身近であったことが理由だったように思います。

委員:農林省・農林水産省を通して、多くの国との交渉に参加されたと聞いていますが、思い出に残る交渉はどのようなものですか。また、その時のエピソードをお聞かせください。

村上大使: 1980年代にあった米国との牛肉・オレンジの交渉や、日韓との漁業交渉が印象深いですね。どちらも新聞紙上に大きく取り上げられていたと記憶しています。最後の交渉の場で発言するのは大臣であり政治家ですが、それに行き着くまでの準備や事前交渉は厳しいものがありましたね。 交渉ですから、表向きは一歩も引けない、強いことも言わないといけないし、強すぎても駄目。どこで折り合うことができるか常に考えていました。 ただ、最も大変だったのは米国・韓国との交渉というよりは国内の調整でした。

委員:腹の探り合いではないですが、交渉相手と食事をしたりすることもよくあるのですか。

村上大使: しょっちゅうある訳ではありませんが、やはり必要ですね。

委員:外国との交渉というと、英語を使われることが多いかと思いますが。英語はどのようにして学ばれましたか?

村上大使: 高校の頃は、ラジオの英会話を聞いて、それを暗記していました。それがベースになっています。その後、農林水産省に入省後3年目に、イギリスのオックスフォードで2年間大学院に行って、そこで農業経済を学んでいる間にかなりレベルアップしたと思います。 英語でラジオ英会話を聞いて暗記したようにスペイン語を学ぶ際にも同じようにした方が良いと思って、こちらに来るのが決まった5月末頃から赴任前までNHKのスペイン語放送を聴いていました。でも、英語の時ほど徹底していなかったので、やっぱりダメですね(笑)。現在は、週に1回家庭教師に大使館に来てもらっているので、3年間こちらにいる間にある程度話せるようになるかなと思っています。

委員:過去に御出張又はご旅行で訪問された南米の国はございますか?

村上大使: 外務本省に出向し、国際協力局の経済協力一課で中南米の円借款を担当していたので、ペルー、ボリビア、コロンビア等には行ったことがありますがチリには一度も来ませんでした。

委員:今回チリにいらして、これまでに訪問された南米の国々と違うな、と感じられたことはありますか?

村上大使:チリは他の国とぜんぜん印象が違いますね。まず、飛行場を降りたところの景色が、ペルーやボリビアと全く違います。もちろん結構貧富の差はあるのだな、と感じますけど。 言葉なんかは、その違いがわかるほどスペイン語がまだわかりませんが、チリのスペイン語は難しい、っていいますね。

委員:来る前のチリの印象と、実際に赴任されてからの印象はいかがですか?

村上大使:昼夜の温度格差がとても大きくて、とても乾燥しているので、体調を整えるのに少し時間がかかりました。 あと、僕はパリ経由で来たのですけど、サンティアゴに着陸する前にアンデス山脈を見て「地球の裏側に来たんだなぁ」と感じました(笑)。アンデス山脈を越えて、かなり荒涼とした印象を抱いたのですが、街中に入ってくると非常にいいところですね。 北の方はもっと荒涼としていてびっくりしました。この前アントファガスタに行ったのですけど、あそこの飛行場に着く直前の辺りって、山が海岸に迫っていて、海岸が絶壁なのですよね。緑が全くなくて。非常に厳しい自然条件でサンティアゴのすぐ北の方も作物の生育に適さない土地が多いですね。

委員:でも葡萄畑はコピアポまであって、北はクロップシーズンが早いので、北半球のクリスマスシーズンに間に合うのですよね。

村上大使:葡萄はあまり肥沃な土地でない方が良いのですよね。苛酷な環境に耐えさせると、植物自身がサバイバルしようとするから、頑張って、良い実がなるのです。 その点日本は温暖多湿だから、難しい。まぁ、その中でも山梨なんかではだんだん良いワインができてきていますが。

委員:大使ご自身はワインを飲まれますか?

村上大使:そうですね、お酒の中ではワインが一番美味しいのかな、と思っています。

委員:ご出身が九州だと伺っているので、焼酎の方がお好きなのかと思っていましたが?

村上大使:焼酎ももちろん飲みます。割と良い米焼酎を買って、ちびちびとやるのが好きなのですけど、チリではなかなか。 最近は芋焼酎に押されちゃって、米焼酎の陰が薄いのが残念です。

委員:チリワインで特にお好きな銘柄はあるのですか?

村上大使:あまり詳しくないので特にはないのですけど、東京ではLos VascosやConcha y ToroのCasillero del Diablo等を飲んでいました。 チリワインは、今日本国内いたる所で売っていて、小さなスーパーやコンビ二でも売っているくらいですから、すごいですよね。

委員:ワイナリーには行かれましたか?

村上大使:Miguel Torresっていう少し南の方にあるワイナリーに行ってきました。チリのワインは全部一定のレベル以上で、変なワインがない気がしますね。

委員:大使公邸で出されるワインはどなたが選ばれるんですか?

村上大使:私は特に注文を出しません。バトラーたちが相談して決めています。 チリ人をお招きするときなどに「日本酒を出しましょう」くらいのことを言うことはありますが、ワインに限らず、お酒類の銘柄を指定することはないです。そもそも選べないですし。

委員:大使がこちらで晩餐会を催される際には、やはり日本酒を出されることが多いですか?

村上大使: 先日出しました。ただ、いつも在庫があるわけではないので・・・。 それから、食事の最初から最後まで日本酒で通すわけではなくて、最初の乾杯だけを日本酒でして、その後はワインという感じです。

委員:大使公邸の住み心地はいかがですか?

村上大使:良いですよ。だんだん慣れてきました。 最初はこれまでの生活とぜんぜん違うので、どこに居たらいいのか戸惑いました(笑)。 今は慣れてきて、できるだけ広く使わないと、って思っています。 数年前に立派な公邸を建てていただいたので、お客様をお呼びするのに非常に良い環境です。

委員:ところで、昨日偶然ゴルフをご一緒させていただきましたが、他に趣味はありますか?

村上大使:他にはないですねぇ。昔は英語が趣味だ、なんてことを言っていた時期があったんですけどね(笑)。東京ではカラオケをしていましたけど、それくらいで。

委員:ゴルフ歴は長いのですか?

村上大使:年数だけは長いです。30年くらいになります。

委員:相当な回数をこなされているってことですね。

村上大使:そうですね。でも、チリではまだ旅行者の気分でいる所があって、良く考えてプレーをしないと、って反省するんですけど、まだそこから脱却できていないんです(笑)。

委員:こちらで観光してみたい所はありますか?

村上大使:少しは観光してみたいですけど、我が家はそれほど出かけるほうではないんです。事前にしっかりと予定を立てて、というよりも土日にさっと出るタイプで。まあ、でも出来るだけ、特にチリ国内で色々見てみたいとは思っています。

委員:チリ人はサンティアゴからプエルト・モンまで1,000kmくらい平気で車で行くようですが、それだとかなり時間がかかるから、日本人はチリ国内どこに行くにも飛行機ですね。

村上大使: 僕もアメリカにいた頃には、ワシントンからフロリダのディズニーワールドまで車で行ったりしました。やっぱり1,000kmくらいありましたね。アメリカ人は「そんなことをするのはクレイジーだ」なんて言っていましたけど(笑)。 今は飛行機が安いし、現地でレンタカーすれば楽ですよね。チリは車ではちょっとカバーしきれないですし。

委員:アメリカで1,000kmも運転なさっていたんですか。大使は運転するのはお好きなんですか? 

村上大使:そうですね、好きなんだと思います。ただ、アメリカにいた時は女房も運転をしていたので、時々代わってもらえたんです。そうじゃなかったら、さすがに一人で1,000kmは運転できませんでしたね。

委員:チリには世界各国のほとんどの有名メーカーの車がありますが、大使が乗ってみたい車というのはおありですか?

村上大使:こちらに来る前から、ドイツ車にしようかなと思っていたんです。日本車でどれかを選ぶとなるとちょっと難しいので。 だから今はメルセデスのクロスオーバーに乗っています。 それ以外だと、クライスラーの3000に乗ってみたいですね。あれだったらゆったりと運転できるかなと思っていたんですけど、女房にはちょっと大きすぎるので。 アメリカ車の大きいのって結構好きなんです。リンカーンのコンチネンタルとか。さすがに日本では乗れなかったですけど。

委員:アメリカでは乗っていらしたんですか?

村上大使: アメリカ製のステーションワゴンに乗っていました。少し大きめですけど、フルサイズではなかったです。以前グランドキャニオンに旅行に行った時に、コンチネンタルをレンタルしたんですけど、その時に「この車はすごいなぁ」って思いましたね。走っていて安定感があって、すごく気持ちがいいです。 でも時代が変わってきて、だんだんああいう大きな車は少なくなってきましたね。

委員:プライベートでは、チリで運転なさっているのですか?

村上大使: チリではしています。国によっては、治安が悪くて運転できないところもありますけど、ここはそういう心配もないので。週末はボディガードもなしで、自分で運転しています。

委員:ところで、先程奥様のお話がチラッと出たのでお聞きしたいのですが、奥様との馴れ初めは?

村上大使:女房は僕より2歳年上なんですけど、中学2年生の時に、知り合いが彼女を僕の家に連れてきたんです。その頃からずっと続いています。

委員:中学生の頃からというと、だいぶ長いですね。

村上大使: そうですね、40年以上になります。

委員:お知り合いになられたのは熊本で、大学はお二人とも東京ですか?

村上大使: いえ、女房は熊本の大学で、僕は東京でした。

委員:遠距離も含めて、ずっとお付き合いされていたんですね。

村上大使: はい。彼女は僕が大学3年の頃かな、上京してきて、それから一緒に住み始めて、卒業する直前に結婚しました。
子供もその後直ぐに生まれたので、娘3人と息子1人、皆もう30歳以上で、孫も一人います。孫がちょっと少ないですよね。なかなか結婚しないので(笑)。

委員:先程オックスフォードに留学されたとお話されていましたが、その時には奥様も御一緒にいかれたんですか?

村上大使: はい。子供ももう2人いて、2歳と3歳だったかな、留学中に3人目が生まれました。
その後アメリカ大使館に駐在した時には、4人目が幼稚園生になっていました。

委員:最近はチリでも家族連れの語学研修生が沢山いらっしゃいますが、僕が会社に入った頃は、語学研修生は、家族帯同はダメと言われていました。それから、確かホームステイを推奨していました。

村上大使:語学の習得には本当は家族がいない方がいいんですよね。僕はオックスフォードに入学する前に一ヶ月だけ語学学校に入っていて、その時にホームステイしていました。その家族とは未だに付き合いがあります。

委員:話は変わりますが、大使の出身地熊本は、どんなところですか? これはお勧めしたいということがあれば教えてください。

村上大使:そうですね、熊本はいいところです。お勧めしたいのは、やはり熊本城でしょうか。 気質的には「質実剛健」とか言いますが、わさもん「早生物」っていって、割と新しいことをしたがるんです。芸能人、特に女性歌手なんかだと熊本出身の人が結構沢山いるんですよ。 例えば、水前寺清子、八代亜紀、石川さゆり。あとは皆さんご存じないかも知れませんが、島津亜矢っていう非常に歌のうまい歌手も居ます。 男性はあんまり居なくて、コロッケぐらいなんですけど(笑)。 それから熊本県人の気質としては「肥後もっこす」とも言いますけど、頑固者というか一徹物というか。天邪鬼的なところがあります。

委員:同じ九州でも、県によってだいぶ気質が違うようですね。例えば、鹿児島「薩摩」とか。

村上大使:そうですね、まあ色々言いますよね。まぁ、鹿児島は島津が支配して特別な政策を取ったりしていたので、言葉も非常に難しいですし、特殊な気質があると思います。あと、佐賀なんかは、あまり大きくないので、身を立てるためには相当頑張らないといけなかったんでしょう、優秀な人が出るし、商売上手だと言われています。教育熱心だとも言いますね。 熊本は、特に熊本市に行くと、飲み屋が多いですよ(笑)。熊本は、人口当たりの飲み屋が多いって言われていますから。

委員:馬刺しとからし蓮根は有名ですよね。

村上大使: ああ、そういえば、最近馬刺しは冷蔵で出せなくなったらしいですね。食中毒の問題で。冷凍を解凍したものしか食べられないので、味が落ちてしまって残念ですね。

委員:ラーメンは熊本ラーメンがお好きですか?

村上大使:好きだったんですけど、だんだん東京暮らしが長くなってくると、九州のとんこつはしつこくなってきて・・・。

委員:博多ラーメンと、熊本ラーメンは違うんですか?

村上大使:違いますね。熊本ラーメンは白いスープで、とても濃厚なんです。初めてだと食べられない人もいるかもしれませんね。
最近チェーン店なんかで出されるものは、だいぶ食べやすくしているみたいですけど、そうでないお店に行くと、それこそゲル状の非常に濃厚なスープがでてきますから。

委員:ここチリでも、美味しいラーメン屋さんができるといいですね。

村上大使:美味しいから、流行るかもしれませんね。ジュネーブにもラーメン屋さんがあるくらいですし、サンティアゴの方がよほど町は大きいし。 ここで日本酒は売れますかね? 良い日本酒ですが。

委員:売れなくはないでしょうね。出せば飲みますし。ただ、どのくらい売れるかとなると・・・。

委員:チリでは美味しいワインが比較的安く飲めるので、高級日本酒となるとやはり割高感が強くて、チリ人にはなかなか手が出ないかもしれません。  

村上大使: アメリカでもスーパーで日本酒が売っていたりしたから、こちらでも売っていたらいいな、と思うんですが、やはり輸送費がかかるから、どうしても高くなってしまいますよね。 僕は農林省からきているから、もちろんそれだけじゃないですけど、その辺り何とかならないかなぁと・・・。

委員:最近はチリで和牛も売っていますね。本当に和牛なのかわからないですけど。

村上大使: あれは、和牛って言う名前を使うのはどうかと、日本国内で議論がありました。和牛の種を持ってきて、日本の育て方で育てているようです。アメリカでもやっています。実際日本産ではないです。本当は「和牛」という名前を保護できれば良いんでしょうけど、それも難しいようで。 それだけ日本の和牛に価値があるということなので、本物をこちらに輸出することができれば、売れるんでしょうけど、チリは検疫が非常に厳しいんですよね。 いずれにせよ、日本の食品が少しこちらに来ると良いなと思っています。

委員:最後に、カマラ会員に向けたメッセージがあれば御願いします。

村上大使: こちらにいる間、チリで頑張っている日本企業の皆さんができるだけ円滑に活動ができるように、お支えしていきたいと思っています。 それから、個人的にチリの文化・歴史・美術・音楽などを勉強して、それをどうにかして日本と繋げていけたらいいな、と思っています。

委員:本日は、お忙しい所お時間を頂き、有難うございました。

村上大使: 有難うございました。

 

 

 


 

 

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